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VOL.9

コンテナ海上物流の国内最大手、ONEに聞く。
新時代に向けた海と陸の新たな連携、その現在地と可能性。

ONE株式会社
代表取締役社長​

戸田潤 氏 ​

​取材日 2024年10月25日

吉田運送:本日はお忙しい中、お時間を頂戴し、ありがとうございます。海上物流の基幹を担われている御社の事は皆さんよくご存じだとは思うのですが、改めて御社のご説明をお願いできますでしょうか。

戸田社長:私どもオーシャンネットワークエクスプレスジャパン株式会社というものですが、シンガポールに営業本社がございます。その会社の日本の総合代理店です。シンガポールにある会社というのは、いわゆる外国海運業をやっている会社です。
このオーシャンネットワークエクスプレスという会社はシンガポールに設立されたのが2017年なんですが、そのタイミングで日本の船会社、日本郵船さん、商船三井さん、川崎汽船さんのそれぞれのコンテナ船部門を取り出して統合させて作った会社となります。
ですから日本の船会社のノウハウ、お客様、それからいわゆるオペレーションを引き継いだ形で統合して規模を大きくしてスタートさせたことで、営業開始させたのは2018年です。今年で7年目となります。そういう会社の日本の総代理店というのが我々ONEジャパンの仕事ですが、主として日本のお客様に対する営業、それから日本のオペレーションもありますので、今回の吉田運送さんのように内陸のデポでありますとか、それからトラックですとか、こういう事業をされている方との間の取引、それからもう一つ大きな所ではターミナル事業をやっていらっしゃる方々とのお取引と、こういうところが主として営業といわれる所となります。日本には東京に本社を置いて、名古屋、大阪、福岡に支店を置いています。

吉田運送:その流れでインランドデポから今回ドライポートへと機能アップを図る弊社をご活用いただいてきました。

戸田社長:日本の船会社3社のコンテンツ部門が統合した会社ですので、このONEという会社ができる前からそれぞれの会社で吉田運送さんとはお付き合いがありましたね。

吉田運送:古くから大変お世話になっております。

戸田社長:これまでも、いわいるインランドデポとかインランドCYですとかエンプティデポですとか色々な表現がありましたけれども、北関東の拠点になるところにベースを構えてらっしゃる運送会社さんということで非常にお世話になっています。
過去2
年ぐらいになるかと思いますが、内陸のCYという形で設備自体も増強していただいて、我々もそれをCYとして使えるようにして、お客様へのサービスメニューを増やすなど、ご協力をいただいています。

吉田運送:国内初の内陸CYということで、メディアにも話題にしていただきました。

戸田社長:弊社の狙いとしては、一つはお客様に対して基本的に東京であったり横浜であったり港湾CYがベースなんですが、これをより、北関東の関東平野の北の方ですね、そこにポイントを置くことでお客様の利便性が上がるんではないかと考えました。
もう少し踏み込んで、我々の希望みたいなところを申し上げると、関東平野をさらに東北の方へ進んでいったところに拠点をお持ちのお客様がいらっしゃいますので、皆様トラックで東京まで運んでいるんですけれども、それを途中の坂東で一旦、中継をすることによって、管理工数が大幅に削減できるのではと思っています。24年問題が騒ぎになっていますが、お客様の方のトラック繰りですとか、ドライバーさんの雇用ですとか管理ですとかそういうところにお役立ちになるのではないかなという、大きくはこの二つが発想の起点になっています。

吉田運送:なるほど、きっかけとしてそういった働き方改革だったり、人手不足だったり、24年問題とかそういった問題意識があったという事ですね。その問題意識を解決される中で、例えば御社は顧客の立場として運送業界に何とかして下さいってスタンスをとれると思います。そういう中で内陸に入っていってCYまで作るのは大きな決断のように思えるのですが、その辺はやはり御社側からもある種、内陸に攻めていって解決したい思いがあったのでしょうか?

戸田社長:はい、そのつもりでしたね。特に坂東もそうですが北関東の山の手前あたりってやっぱり製造業の皆様は沢山拠点を置いているので、北関東に拠点を持つという事は、そういうお客さんに対するサービスメニューの拡大というメリットがあると認識しました。

吉田運送:坂東のCY化が運用としては2年ほどなんですけれども、何かこれまで見えてきた課題感はありますでしょうか?

戸田社長:課題としてはCYとしての利用促進ですね。坂東CYに空コンテナを返していただいたり、そこでピックアップして頂いたりとか、こういう利用は確かに多いんですがCYとしての利用の定着を促進する必要がある。コストがちょっと高かったりとか、そういう問題も含めて色々あるんだと思います。

吉田運送:坂東CYと海の港の運送、ここを一工夫する必要があるということですね。

戸田社長:そうですね。逆にそこさえクリアできれば広がりが出てくると考えています。

吉田運送:内陸の港について、ドライポートという名称が世界共通では言われています。弊社としましては、やはり日本に適した形でのドライポートを作っていきたいというなかで、CY化は一つの目印になっています。
先ほども話が出ました24年問題、ドライバー不足といった問題が本格化していく中で、日本全体のコンテナ物流の効率化は測っていかねばならないと考えております。

戸田社長:それは本当にそうだと思います。坂東CYもそうですし、佐野IPの方もですね。やっぱり自動車メーカーさんが中心に周辺のメーカーさんがいっぱいらっしゃいます。

坂東CYや佐野IPを拠点として、ロングホールを行くより近距離をやればトラックの回転が良くなるというこういうことだと思うのですけれども、それはいろんな形で要望いただいてるところでありますね。

吉田運送: 24年問題と同様に、近頃では、GXへの対応と言う流れもあります。前々回のインタビュー(株式会社クボタ様)でも話題になりましたけれども、コンテナの取扱量が年間何万本もやっていると、やはりGXや脱炭素について考えざるを得ない。
そういった視座に立った場合のドライポートの存在はどのように見られますか?

戸田社長:24年問題とGX・脱炭素は実はつながっているように感じます。長い時間働けないように働き方改革をしなければならないという観点から始まって、1回に走る距離を短くする。結果として二酸化炭素をなるべく出さないという観点から、トラックの走る距離を短くしようというのが脱炭素に繋がって来る。
1回のトラック輸送が北関東から東京や横浜まで行くのであれば、1日2往復できるのかどうか分かりませんが、場合によってはできないかもしれない。それが坂東CYであれば2回も3回もできるということで、GX的にも効果は大きいんじゃないかなと思います。

吉田運送:GX・脱炭素の制度面でいえばこれからという感じがしますね。 

戸田社長:港から積んで次の最終港で揚げるこの船の上に乗っている間の脱炭素については、お客様の貨物1コンテナ辺りの二酸化炭素の排出量は何キロ削減することはできました、ということは言えるんですよ。
けれどもこれに今の文脈では我々だけでは、内陸の部分のそのメリットを開発しづらい。その部分を、吉田運送さんが担ってくださるのであれば、一緒に荷主にもアピールしていきたいところです。
日本の内陸間の輸送について効率化できるところがあれば、どんどんやりたいなと思っています。

ラウンドユースのコンセプトは基本的には近場でくるっと回して来るということだと思うのですけど、AとBが離れていてもいいかなと思っています。輸入で入ってきた実入りコンテナをデバンニングして空になったコンテナをA地点で内貨転用してバンニングを行い、それを別のB地点に持っていってデバンニング、その後に輸出貨物をバンニングして、海の港までもってきてもらう。

この三角形全部積み荷があれば、効率的な使い方になりますし、そうすることによって空コンテナで走っている距離が短くなって、働き方改革にもGX・脱炭素にも繋がっていく。これは非常にいいんだろうなと思っていますし、そのために我々のコンテナを使っていただくのはウェルカムです。

吉田運送:そういう使い方ができるんだっていうことを我々の方でも表現して広めていきたいなと思っています。コンテナラウンドユースはドライポート活用の代表例ですけれども、そもそも知らなかったり、知っていたとしても一歩踏み出すのが怖いであったり、そんな風に思われるお客様も多いと感じます。ただ弊社としては空バンをデポからピック出来ること自体、輸送の安定性の面でメリットを感じてもらえるはずだと思っています。ご協力いただいている、今回のインタビュー企画もそうなんですが、お客様の声をとどけて、どんどん発信をしていけたらと思っていて、そういった意味でもウェルカムと言っていただけるのは非常に嬉しいですね。

戸田社長:吉田運送さんと我々と一緒にお話しさせてもらったら、今のその仕組みをご存じない方に対して、大概のことが説明できますよね。そこから先もし何か不足するものがあれば、それは誰に聞いたらいいんだっていう? そういう引き出しは多分お互い持ってますので、なんらかの解決にはお役にたつのではないかと思います。

吉田運送:ドライポート活用のもう一つ観点としては災害対策があります。例えば海の港だとどうしても台風が来た場合に陸揚げできない。坂東CYを日常的に港として活用しておくことで、新規に品物は入ってこないが1週間は国内を回せます。

そう言う意味での陸と海の港のWエンジン化が有効な場面も想定されます。港の二重化と言う文脈に加えて、坂東市、佐野市、常総市、結城市と弊社は災害協定を結んでおります、有事の際には災害用のトイレコンテナお貸ししますといった純粋な災害時対策支援ですね。

戸田社長:空コンテナしか置けないデポと実入りも扱ってもらえるデポでは、おそらくそのデポのファシリティとしての強度が違うはずです。船会社目線で申し上げると、東京とか横浜の港が台風の襲撃で被害が出で、実際には水が上がってコンテナが流されたりとか、東日本大震災の時には岸壁が壊れたりとかありましたので、海の港が使用できなくなるタイミングがあるのですが、その時にお客様によっては東京や横浜のCYまで来てもらっても、お引き受けできない。

その場合、しばらく、その工場の横に置いておくのは邪魔になるので、坂東CYに運んでいただく。一時的に海の港の代わりになるのかなと。東京や横浜に持っていけませんからね。
今後さらなる物流効率化や、サービスの拡張と言う意味で、内陸のプロである御社との連携は欠かせないものだと思っています。ぜひ引き続き、お話し合いの場が持てればありがたいです。

 

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