
VOL.8
不動産活用の国際的リーディグカンパニーCBREに聞く。
環境配慮と収益性の両立が魅力。投資対象としてのドライポートの可能性とは。
CBRE株式会社
アドバイザリー&トランザクションサービスインダストリアル&ロジスティクス本部長
奥村眞史 氏
アドバイザリー&トランザクションサービスインダストリアル&ロジスティクス首都圏営業部アソシエイトディレクター
田澤卓也 氏
取材日 2024年3月16日
吉田運送:本日はお忙しい中、お時間を頂戴しありがとうございます。スペシャルコンテンツとしてお届けしています、連続インタビュー企画。第三回は株式会社CBREの奥村さん、田澤さんにお話をうかがいます。まずは簡単な自己紹介をお願いできますでしょうか?
奥村さん:私たちの会社はCBREと言いまして、世界で100か国以上、拠点でいうと500拠点以上のネットワークを持っているグローバル企業、その日本法人という形になります。不動産のサービスプロバイダーという事で私たちが不動産を持つのではなく、皆さん不動産を持っていらっしゃる方々、もしくはそれを借りようとしてる方々の間に入り、不動産関連のソリューションをさせていただいています。
吉田運送:土地を有効活用するという意味ではデベロッパーがまずは頭に浮かぶ方が多いと思います。そことの明確な違いっていうのはどういったところなんでしょう?
奥村さん:明確な違いは、私たちは不動産を持たない所ですね。私たちが不動産を持っているとすると、弊社保有の不動産と他社保有の不動産等を比較した時に、借りようとしてる方・買おうとしてる方から見た時にどれが一番本当に自分たちにとっていい不動産ですかという問いに関しまして、色眼鏡って見られてしまうかもしれません。
私どもは顧客の立場に立って一番いいと思われるものをサービスとしてご提供していくというのが主眼になるので、基本的に不動産は持たない。そこがデベロッパーさんとの一番の違いです。
吉田運送:独立的な立場から客観的に見てこれが本当にいいですよ、とおすすめできるが強みなわけですね。奥村さん、田澤さんの部署はロジティクスを担当されていらっしゃいます。
田澤さん:ええ。我々の部署はインダストリアル & ロジスティックというところで、物流の賃貸を中心にやっています。賃貸仲介中心にやりつつ、他にも売買仲介だったりですとか、あとプロジェクトマネジメント、つまり管理の方ですね。建築の弊社が受注するわけじゃないんですけど、そういった形で建設のお手伝いとかもしています。
奥村さん:建物を建てますって時にスケジュールがあってコスト管理をしないといけないんですね。そういったプロジェクトを僕らの会社の方としてマネジメントさせていただき、コスト管理もさせていただく。スケジュールも工期が遅れないようにとか、質自体も当然低いわけにはいかないとか、配慮しなければならないポイントは多いです。コスト管理もしながら、ある一定の高い数字の質をしっかりと提供していくということですね。そういうところのマネジメントをするチームもあったりしますね。
例えば、本社を移転するとなると、この期日までにしっかりと完了するために、什器備品なんかも用意しないといけないとかいろいろな諸課題を整理して、引っ越しなんかのデザインも当然しないといけないですし、中の工事もしないといけない。
吉田運送:なるほど。仮に、弊社が坂東・佐野以外にも拠点を増やしたいとなると土地を探していただくところから始まる訳ですか?
奥村さん:はい。いろんな部署が集まって、僕らみたいに仲介の土地情報をご提供するみたいなところもあったり、先ほどもお話ししたプロジェクトを管理する部署があったり、総合的にサポートをさせていただきます。
田澤さん:例えば、もともと物流不動産を開発するのがもう全くしたことのない会社が大きい土地を持っておられ、物流施設が昨今一般できてるんで大きい土地もありますし、今までの業態を変化させて、物流不動産を建てて不動産オーナー企業やりたいとというご相談をいただいたことがあります。それで物流のコンストラクションマネジメントプランを弾きました。あとゼネコンさんと調整もしましたね。我々の部署ではテナント情報倉庫を借りたりとか、そういう情報をいっぱい持ってますので、お手伝いをして、完成したらプロジェクトマネジメントの方で物件の管理をしていくという形をトータル的に行っています。
奥村さん:もちろん我々にもやれないところもありますし、例えばここで倉庫を建てるのにどの需要があるのか、もっと分かりやすく言うと、オフィスにするのがいいのか、倉庫がいいのか、そういうところから検討に入っていって、今回は倉庫が最適だろうということになり、ならば倉庫の企画ってどういうのがいいの? とかみ砕いていきました。
吉田運送:なるほど。統括的に包括的にサポートしていくという業務ですが、逆にあなた土地余ってるんだけど、なんかうちに適したものを提案して欲しいといった依頼もあるものでしょうか?
奥村さん:あります。わかりやすいところで言うと、売るのがいいのか? 自分たちが持っておくのがいいのか、持つんだとすると、どういう不動産が長く、安定的に収益性のある事業として成立するのか、その時にじゃあコストはどれぐらいかかるのか、期間はどれぐらいかかるのか、そういったところをしっかりと全部出させていただいて、その中でじゃあこれが一番いいんじゃないですかっていうのをご提供させていただくこういうこともやってますね。実際出来上がったら、今度そこの管理を受けることもあれば自前で管理されることもあるんですけど、テナントを実際今度入れていくみたいなことになれば、そのテナントを私どもで紹介することもできます。
吉田運送:弊社は北関東の茨城と栃木に拠点を持っています。北関東で何か事例があれば教えていただけますか?
奥村さん:やはり大型の物流施設が圏央道エリアを中心に増えてきているのがポイントなのかなと思います。大きな土地がそこにあるということもありますし、エリアにはやはり昔から工場が集まっているというのもありますし、高速道路も発展していて、交通の便がいい。茨城のみでも2023年で物流倉庫の面積が14万坪あります。現在も増加傾向になります。
吉田運送:以前は北関東エリアの物流倉庫の伸びはあまりなかったのでしょうか?
奥村さん:そもそも日本での大型の倉庫の歴史自体がそう古くないんですね。普及を始めたのが2003 年ごろです。まだ 20 年強ぐらいの歴史ということになります。じわじわと増え、2019 年ぐらいからかなり供給が加速しました。また茨城を例にすると2014 年に新規供給で 1万1000 坪ですね。
吉田運送:物流倉庫が増えているのは全国的な傾向なんでしょうか?
田澤さん:はい。関西にしてもそうですし、東北エリアもそうです。供給数が増え需要もあって、首都圏エリアより動きが少し活発かもしれない。
吉田運送:東北だとどのあたりが特に活発ですか?
奥村さん:岩手県や宮城県のあたりは増えていますね。
吉田運送:円安の影響もあり製造拠点が国内に戻ってくる可能性など、土地活用のあり方が今後また変わってくるのでしょうか?
奥村さん:ロシアの戦争も含めて、海外で有事の際供給網が断たれてしまうということがありました。改めてやはり国内にしっかりと一定の在庫を持たないといけないという意識は高まったと思います。そういった意味でも工場が集まる近辺の物流倉庫は一定の需要は続くだろうと思います。
吉田運送:さらに2024年問題も絡んできますね。
奥村さん:はい。効率的な物流網をしっかりと構築しないといけないという使命感はありますね。
吉田運送:弊社としては、それに加え、東北地との物流の中継的な需要としてもこれから伸びるのかなと思ってます。
弊社の発想として、港があると倉庫ができるっていう構図が頭にあります。港にモノが集まって、労働者が集まって、繁華街ができて街になる。神戸も横浜もそのような形で発展したじゃないですか。今回の連続インタビュー企画は弊社の各拠点を「ドライポート」への改称とそれにともなう機能アップを記念してのものなのですが、ただの倉庫ではない、物流の要としての陸の港を広めていきたいという思いもあります。
田澤さん:雇用も生まれて地域貢献もできてっていうところが物流施設に関しては大きなメリットです。それが、ドライポートという国際標準のパッケージとして提案できるのは弊社としてもありがたいですね。他社との違い、差別化がはっきりと打ち出せますし。ドライポートに投資をしていこうという投資家の方々も出てくると思います。
吉田運送:今北関東中心にやっている中ではありますけど、拠点の使い方の特色がそれぞれの地方で見えてくると思っています。
★写真説明
吉田運送:本日はありがとうございました。最後に、このたび圏央ドライポートへと改称・機能アップを図る弊社の拠点になにかご期待いただけることがあればお聞かせ願えますか?
奥村さん:例えば倉庫を建てられるオーナー様がいらっしゃって、そこにテナントを誘致してほしいと言われるとします。もしくは物流施設でも構築しようと思った時に、やっぱり環境の事とかすごく考えないといけないというがマストであると同時に、コストを考えないといけない。この二つの両立の最適解として、御社がドライポートを舞台に提供されているサービスは非常にメリットを感じていただけるところだと思います。
私どもも提案をしていく中で、御社のノウハウをお借りいただけることは、大きなメリットとなりますし、環境面にも物流の強化にも貢献をしていただけるということになりますので、ここはぜひいろいろと積極的に活動していただければと思います。
欧米と比較するとやっぱり環境配慮面に対しては日本ってまだまだ取り組みが甘いと思うんですけれども、一方で確実に来る流れとして脱炭素、人材不足の両方を解決し得る陸の港、ドライポートはもっともっと普及すべきだと考えます。私どももこういったサービスをご提供してる会社があるよということを、お客様に積極的にお伝えしていきたいと思います。