VOL.5
日本コンテナ輸送
企業インタビュー
港湾地区ドレージの老舗、日本コンテナ輸送の幹部社員に聞く、労働環境の改善と効率化、さらに内陸港をして物流のスマート化の取り組み「港」と「海」、二つのコンテナ運用、その連携の可能性とは何か?
取材日 2020/6/11
Interviewee
代表取締役社長 土屋廣明氏(2020年取材当時)
営業部 部長 武者吉晴氏
参事 多田秀明氏
京浜支店支店長代理 兼 輸送課長 高野永一氏
◇日本コンテナ輸送の歴史
吉田運送:この度はインタビュー取材をご快諾いただき、ありがとうございます。日本コンテナ輸送(以下:NCY)の皆様にお話をいただける機会をいただき、とても楽しみに参りました。HPをご覧になる方向けに簡単に御社のご説明をお願いできますか?
土屋社長:わかりました。弊社は国際海上コンテナの陸上輸送をやっております。創業は、今から53年前の、1967年です。それまでの外航定期船はいわゆるTween Deckerという在来貨物船です。船の中に幾つか貨物艙があり、その上下の間にデッキがあるので、それがtweenという名前の由来です。下に重い鋼材、その上に中古車や一般雑貨を、本船の荷役装置で積み下ろししていました。1960年代に、アメリカの会社が規格化されたコンテナで、一般雑貨を運ぶことを始めました。それを日本郵船も始めようという事になって、1967年にマトソン社と組んで、日本にフルコンテナ船が就航しました。その際、品川埠頭と神戸の摩耶埠頭に、コンテナを陸側のガントリークレーンで本船荷役し、山側でトラックに受け渡す機能を持ったコンテナヤード(CY)が出来ました。
吉田運送:日本のコンテナ輸送の黎明期ですね。
土屋社長:はい。日本郵船が1968年に就航させた箱根丸の積載量は752TEU(※20フィートで換算したコンテナ個数を表す単位)でした。今は最大級のコンテナ船は24,000TEUです。しかし752TEUの小さな船でも革新的でした。船、そして港運・陸運の根本が変わったのです。在来貨物船だと船が3,4日停泊しないと荷役が終わらないのですが、コンテナ船ですと朝入港して夕方には出航となる。また、コンテナはトラックで陸上の荷主ドアまで運ばれるので効率がとてもいい。国際海上コンテナによる海陸一貫輸送は、一気に日本でも広がりましたね。
日本郵船が陸上の仕事もするという事で、陸の王者の日本通運と組んで日本郵船51%、日本通運49%の出資比率でドレージ会社を作りました。それが当社です。混同されがちですが、日本郵船はコンテナヤードも新しく作り、運営する会社として「NCT(日本コンテナターミナル)」を作りました。こちらは日本郵船が三菱倉庫と手を組みました。
◇海と陸のコンテナ運用
吉田運送:ドレージを担当する御社は今では港の外、とはいっても港のすぐ近くにコンテナを一時的にためておける一種の空バンプール(※空のコンテナを集積するエリア)を持たれています。
土屋社長:バンプールは日本郵船の施設ですが、弊社は、その横に、CYのゲートオープン時間に搬出入するコンテナを積んだシャーシを台切る車庫を持っています。やはり港の中でさばけるコンテナの数は限りがあります。ですので、近くにコンテナを仮置きする車庫が必要になりました。とはいえ、港と一体的に運用していますので、海陸の結節点としての港の機能の一部と言えると思います。欧米などでは内陸輸送が発展していて、トラックだけではなくてバージや鉄道もメインで使われ、船社手配が多いようです。日本では船会社が手配するのは港のコンテナヤードまでが一般的ですが、空バンの返却先としては、坂東などもコンテナデポとして認められ始めています。その際、輸入で空いた空コンテナを再利用する場合のリフトオンオフの費用は船社が持ちます。
◇協業の可能性
土屋社長:海コンドレージは、国際海上コンテナの海陸一貫輸送が始まり完結する最前線の端末を担っていますが、我われがベースとする港からコンテナ物流チェーンが北関東方面の内陸に伸びている先の末端で、吉田運送さんが拠点を拡げ荷主と向き合っておられます。
吉田運送:海と陸が組んで何か新しい、有効な取り組みができないか? 前々からそういったことをお話していました。良い機会なので今日はそれについてもお話しできればと思っていました。
高野さん:私が吉田運送さんに期待しているのは、行動力と分析力を非常に持ち合わせていらっしゃるので、インランドデポでできることをぜひ深堀してほしい。そしてその動きが周りのデポにも波及していけばいいなと思っています。
我々は海側の機動力が強みですが、納品現場に着いた後の発展性、これは我々にはわからないところです。港から走っているので時間の制約もあります。
吉田運送:インランドデポとしては、納品現場に着いた後の発展性が一番求められているところですので、内陸側の末端輸送が提案力となるスキームを作りたいですね。港に強い御社と内陸の弊社での要素を組み合わせて提案をできるのは今じゃないかと思います。
多田さん:吉田さんのおっしゃる通りで荷主さんに直接提案してサービスの有用性を理解していただきたい。何かきっかけをもって荷主に提案して「いいですよ」という流れを御社と弊社で作っていき、私たちは株主半分が日通なので営業マンの力も借りて仕事を集荷してきてもらい、あとの半分は船社系ですので船社をONEにするからターミナルと協業していき「NCYだったら効率よく入れられます」というのを目指すべきだと思います。
高野さん:回転力と輸送力で臨海と内陸の拠点を結び、さらにラウンドユースや、中継点するなど、タイアップによって新たな魅力ある輸送サービスを提案していければと思います。
多田さん:タイアップするにはある程度信頼性がないとうまくいきません。しかし、我々は吉田さんとは昔からの付き合いがあり、既に信頼関係があります。タイアップして新しいサービスを作り上げるにはベストパートナーだと思います。
ラウンドユース=コスト削減のみではないメリットを考えていきたい。吉田さんのインランドデポに夜間に輸送して昼間の渋滞を避けるなど、有効なやり方がいくつもありそうです。
武者さん:コンテナラウンドユースには内陸のデポのインフラ整備が必要なのですよ。インフラ整備が整えば内陸デポを中継するので海側から直での末端の輸送を減らせます。
吉田運送:しっかりとしたインフラを担うために必要なのはリペア機能です。ダメージがあって使えず、港に戻すとなるとむしろ手間が増えます。
多田さん:インランドデポで空バンの返却やピックアップができるけどダメージコンテナなら港に返さないといけないってことですね?
吉田運送:そうです。実はダメージがあってラウンドユースに使えないコンテナは結構あります。弊社はインランドデポの高機能化を進めています。その一環としてすでにリペア機能をもっていて、さらに拡張していく予定です。それにより安心してインランドデポを使っていただけるようにしていきたいと思っています。
◇待機時間を減らす、女性も働ける環境を
吉田運送:海の御社と陸の弊社が組んで、期待されることはサービス拡張による提案力強化以外に何かありますか?
高野さん:そうですね。今問題になっているのはドライバーの拘束時間の長さですね。混んでいる港では7時間もかかったりします。7時間かけて取ったコンテナを2時間かけて配達し、2時間かけてデバン(※荷卸し)してそれで一日が終わってしまう。そこで港と陸を切り離して行えば効率化になるのではないでしょうか?
土屋社長:吉田さんが内陸で作業している間に我々は車庫が港なので、港の営業時間内にコンテナをピックしてストックしておけば、夜間でもいつでも御社のデポに回送できますよね。
多田さん:子育てや介護で働き方に制限のある方、トイレが気になる方、あとはご高齢のドライバーにも活躍してもらえるインフラ整備が必要ですね。例えばショートドレージを子育て中のドライバーに任せて、港からインランドデポまではベテランのドライバーに任せる。また港の仕組みも複雑で慣れていればどこにどう並べば良いのかわかるが慣れてないと大変です。適材適所でうまく組み合わせていき尚且つNYKグループのターミナルがありますので、我々NYKグループだから「協力してよ」とお願いすればどうにかなるかな(笑)あとはONEに掛け合ってお客さんをONEに誘致するからその代わり効率よくお願いする。うまくスキームを作って御社と協業していきたいですね。
吉田運送:他の物流に比べても、海上コンテナ輸送は待機時間が長い実情があります。業界全体の人手不足解消のためにも、労働環境の改善に直結する待機時間の現象は重要だと思います。それが輸送力の増加にもつながるはずです。
労働環境が改善されることで、なり手が増え、物流業界全体を活性化し、多様な提案力が可能になるという良い循環を作っていきたい。今までは距離で運賃を出していましたがこれからは、こんな運び方をするからどうですか? そんな提案が可能になるのが理想です。つまりドライバーの働き易い環境を作り、それが成功すればお客さんに対して還元できるというステップですね。
土屋社長:提案力の一番のカギはどれだけ車が回転するかだと思います。1日の限られた時間の中でどれだけ稼働するか。その仕組みを作っていくためにお互いの持っている物を持ち寄る。我々は港が持ち場だが内陸の情報を持っていない、吉田さんはその逆ですね。そこからコンテナをマッチングするのがいい。東京港は7割輸入で3割輸出ですから。船会社は内陸のことをあまり把握していないですが、我々は内陸のことを知っているので船会社と共同営業して内陸のマッチングを行う。
◇新型コロナの影響、そして来るべきオリンピックに備えて
高野さん:コロナ禍のこんな時期だからこそドライバーさんが1本でも配達が付くのであればやるべきですよね。業界で広がりますから。当社では埼玉でナイト部隊を作っていまして1台の車両を昼と夜とで2シフト制で使って動かしています。夜走りの時は夜しか走らないので走る距離も一定、待ち時間はなしだから体力的に高齢者の方でも運んでいただける。
吉田運送:素晴らしい取り組みだと思います。
多田さん:実は御社のHPのトラガールを参考にさせていただきました。今後はドライバー不足もあり、その雇用枠は大きいですよね。
多田さん:オリンピックを迎えるにあたって予想される物流量の増加も、吉田さんと組めばすぐ対応できると思っています。夜間に競技がなければ夜のうちに港側でコンテナ搬出入を行い、日中は吉田さんの所からメーカーさんの所に運んでもらう。
オリンピックだからと言って止められない工場もあるのですから、吉田さんのデポと弊社をシャトル便で結び日中は通常通りやれますからね。本当にオリンピックがやるかどうかですけどね(笑)
多田さん:コロナ禍の後にどのような所が今後伸びて行くのかを吉田さんと一緒に模索しながら、うちの営業と御社の方で網を張って何かを作っていきたいですね。今後はどう荷物が動くか予測できないですからね。
土屋社長:オリンピックの問題は東京港です。我々のコンテナドレージ業務はしわ寄せをとても受けるのですよ。特に港の待ち時間です。その原因は8:30から16:30までの稼働時間です。港にコンテナを取りに行った時間の実績を取っているのですが、5月は平均で58分、19年の5月は1時間13分です15分改善されましたが、それでも1時間近くかかってしまう。名古屋港は15分、清水港は12分です。比べると圧倒的に東京港は問題なのです。東京港はオリンピック時期は夜中4:00までオープンすると言い始めましたので良いことだと思います。オリンピックが終わった後にもこの仕組みをある意味レガシーにしていければいいと思いますね。50年近く変わっていないのでそれを変えるいいチャンスです。残念ながら延期になってしまったけれど、オリンピックがあろうがなかろうが是非やってほしいです。
吉田運送:今日お話ししているだけでもたくさんの協業効果が見えてきました。ぜひ具体的にお話しを継続できれば幸いです。
土屋社長:ぜひそうしましょう。
物流のコンテナ化が日本に波及した当初から海上コンテナの陸上輸送を担ってこられた日本コンテナ輸送株式会社は、陸と港を繋ぐ要であり、土屋社長の言葉を借りるなら「港の末端」です。一方弊社「陸の末端」であり、二つの末端が提携することでさらにスムーズな輸送が可能になる、そのことを確信したインタビューになりました。